『魔眼』プロダクションノート 制作部 石毛麻梨子
【監督の頭の中】
普段、監督伊藤淳は何を考えているのか分からない。
そんな伊藤が書き上げたシナリオは皆の度肝を抜いた。
「なんだ?この世界観は?」
現実と非現実を行き来する男の存在とは?それを映像化する表現方法とは?
『魔眼』の製作は、伊藤の世界を引き出すことから始まった。
【才能ある絵コンテ】
伊藤は言葉よりも絵で語る。伊藤の書いた絵コンテは、漫画として成立してしまうほど素晴らしい。人物が分かりやすく、背景もきっちり描かれている。キャメラマンはじめ、技術スタッフ一同、大変重宝した。しかし・・・それは大きな落し穴でもあった。
【漫画ではなく映画】
二次元の世界を三次元の映像にするには、“時間”と“生身の人間”を考慮しなければならない。伊藤が苦労したのは、まさにこの二点。
伊藤が芝居の間のとり方や人物の演出にとまどっていたとき、スタッフの中からこんな声があがった。「完璧すぎる絵コンテが災いしているのでは。これは漫画じゃなくて映画なんだ」。
【主役の真知子と謎の男、笠木】
だが、真知子役の谷更紗と笠木役小田篤が、伊藤と何度も話し合いやリハーサルを重ね、“生身の人間”を作り上げた。現実ではあり得ない設定に“リアリティ”を与えたのだ。
脚本に惚れこみ、事務所を説得して参加したという谷。
感情を掴みにくい笠木役にずいぶんと苦労したという小田。最終的には伊藤のいう「普通に見える人間」を体現している。
【魔眼の美術と特殊メイク】
『魔眼』最大の見せ物、異空間を見つめる真知子の“目”。傷つけられた“目”=“魔眼”は、特殊メイク担当の成田が伊藤と何度も話し合い、完成させた。
また家族の惨劇や真知子の見つめる異空間の美術演出は、極わずかな予算内で製作された。美術スタッフと伊藤が共に撮影ギリギリまで粘り、完成させた力作だ。火花散る蛍光灯、傷つく瞬間の“目”、噴出す血しぶきも本物と思わせる出来栄えである。
【魔眼の世界観と音楽】
謎の男が登場する兆しのテーマ曲、真知子の“魔眼”が不思議なパワーを発するときの音楽、これらは『魔眼』の世界観をより深く表現している。音楽担当貝塚治樹によるものである。ふだん物静かな伊藤が、恥ずかしそうに貝塚にメロディを口ずさむ光景は妙に胸騒ぎがしたものだ。
ついに作品はできあがった。これは非現実を越えた現実のパラレルワールドである。
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